日本のスヌーズレンに足りていないもの
2026年11月07日 16:29
🌻日本に伝わって、約30年
「スヌーズレン」は、1970年代のオランダで生まれ、1990年代半ば~後半に日本に伝わったと言われています。
しかし、日本にスヌーズレンが伝わる以前から、日本の中にも、重い障害のある方に向けたスヌーズレンのような活動が行われていた現場がありました。
また、いまから40年ほど前に、障がい者施設において、ピアノやバイオリンなどの音を通じた、感覚的な体験を提供する取り組みがあったという話も聞いています。
スヌーズレンが日本に伝わってから、約30年。
30年もの間、各地で活動が続いてきたことを評価する声もありますが、障害のある方のレクリエーションや余暇の楽しみについては、それ以前から取り組まれてきたこと、スヌーズレンの環境と関わりがもたらす変化や可能性などを考えると、私は「もう少し広がっていてもよかったのではないか」と思ってしまいます。
🌻スヌーズレンの認知
私が活動をはじめた2022年当時は、障がい者福祉に携わる方や、スヌーズレン室がある法人で働く方でも「スヌーズレンを知らない」という声を多く聞きました。
ここ数年の間に、岡山でも、教育者や支援者、保護者へと少しずつ認知が広がってきましたが、スヌーズレンを「知っている」ことと「理解している」こととは、少し異なるものだと感じています。
🌻ヨーロッパのスヌーズレン
では、スヌーズレンが生まれたヨーロッパでは広く知られているのか、というとそうでもなく、障がい者や福祉にあまりなじみがなければ、日本と同じく、知らない方も多いというのが実情のようです。
ただ、日本と異なると感じるのは、障がい者施設はもちろん、学校や病院、地域の交流場所などにも当たり前のようにスヌーズレン室が設けられていて、障害のある方たちが利用できるようになっていること。
これらの場所は、国や自治体などの公的な機関が運営を支援しているところも多いそうで、障がい者(児)を取り巻く環境についての捉え方の違いさえ感じさせます。
「かんかくもーる」の顧問をしていただいている、河本佳子先生(スウェーデン在住)からも、スウェーデンの障がい者福祉について、さまざまなお話をお聞きしています。
中でも、障害のある方たちが身近なところで活躍しているというお話は特に印象的でした。
ショッピングモールでのショーウィンドウの窓ふき、レストランの清掃など、地域で働いている方もたくさんいらっしゃるそうで、普段の暮らしの中で出会うこと自体、珍しくない環境がすでにあるのだと感じます。
🌻日本での広がりを難しくしているもの
日本の中で「スヌーズレン」が広がることを難しくさせる要因には、さまざまなものが考えられます。
・障害のある方やマイノリティへの理解の違い
・社会資源や制度の違い
・文化の違い
・感覚的なものに対する価値観の違い
これらには、時代背景なども関係していて、社会の変化とともに少しずつ変わってきているものもあるように感じます。
ただ、いまなお足りていないと思うのが
・体験の機会
・体験から得られたことの言語化
この二つです。
🌻「かんかくもーる」の役割
かんかくもーるは、2024年4月のオープンから、障害や特性のある方とそのご家族が、安心して過ごすことのできる場を提供してきました。
しかし、かんかくもーるだけでは足りません。
また、私たちの活動の目的は、「かんかくもーるの完成」ではありません。
スヌーズレンの活動にも用いられる、多感覚環境の活用や、感覚に配慮した環境が地域に広がっていくこと。
環境を変えることで、多様な人が参加できる社会を目指すこと。
その理解や必要性を伝えること。
そのためには、「足りない二つ」を補うことが必要不可欠と感じています。
施設運営だけでなく、出張提供や研修、講演などを通じて、より多くの方へスヌーズレン環境の体験を届けながら、それぞれが感じたことや気づきの言語化をサポートする。
まずは、多感覚環境の中で自分自身に起こる変化を、一人でも多くの人に体験してもらうこと。
写真や映像では十分に伝えられない感覚を、実際に味わってみていただくことが必要です。
また、「感覚を伝えること」には誰もが難しさを感じるものですが、感じたことを言葉にできれば、他者との共有は格段にしやすくなります。
体験から得られたことを、それぞれが言葉にして持ち帰っていただくこと。
私たち以外にも、この空間の良さや必要性を伝えてくださる方が増えることで、社会の理解はぐんと広がるものと考えます。
🌻まずは支援者から
・体験機会の充実
・体験から得られたことの言語化
これらについて、今後は支援者のサポートにも注力したいと考えています。
スヌーズレンの理念や手法についての学びも大切ですが、それだけで実践につなげていくことに難しさを感じる、そんな声も耳にします。
また、実践には、環境づくりについての学びも必要です。
ただ物を置くだけではなく、何を大切にして、何を感じ、どんなふうに過ごせる場にしたいのか。
それらを具体化するためにも、支援者の体験と、その言語化が欠かせないのです。
かんかくもーるでご提供している導入支援サービス「まるごと1日研修Day」や、スヌーズレン団体との連携などを通じて、支援の現場で働く方の体験と理解を広めていくことが、必要な方へ必要な環境が届く一番の近道だと感じています。
🌻そして、その先へ
私の夢は、いずれ「かんかくもーるが必要なくなる日が来る」ことです。
地域の中に、多様な感覚に配慮した場所が整備され、誰もが安心して過ごすことのできる場と時間が当たり前にあること。
「いまのスヌーズレン」に足りていないものを補う取り組みは、その未来にもつながるものと信じています。
(感覚と環境をつなぐ人/多感覚環境の実践者 大西直美)