かんかくもーるのつぶやき

山陽新聞コラム② 活動のきっかけ

山陽新聞コラム② 活動のきっかけ

2026年06月29日 21:52

大西は、2022年より、多感覚環境(スヌーズレン)の体験機会の提供を通じて、多様な人が地域とつながる活動に取り組んでいます。現在は、「かんかくもーる」という施設の運営を通じて、障がい児(者)とその家族が遊んだり、安心して過ごしたりできる場の提供を行っています。

この活動を始めるまでは、建築士として岡山市内の設計事務所に勤めていました。障害のある子の親でもない、支援者でもない私が、なぜこのような取り組みを行っているのか。不思議に思う方も多いようです。

きっかけは、2020年に「線維筋痛症」という病気を患ったことにあります。末期がんに相当するとも言われる激しい痛みが全身に生じる病ですが、原因も治療法も見つかっていません。またその後、「慢性疲労症候群」という病気を合併していることも分かりました。外見からは分からない、耐え難い痛みと、鉛のように重い身体。やがてそれまでと同じように働くことも、日常生活さえも困難になっていきました。

建築士としての将来設計も崩れ、絶望の淵に立つような思いでいた頃、毎週のように通っていた大学病院で、ふと他の患者さんのことが目に留まりました。杖をつきながら歩くのもやっとという方や、見たこともないような特殊な車椅子に乗る方。その多さに驚く一方、何度も見ているはずの光景なのに、自分自身の意識の中に入っていなかったことに衝撃を受けました。

ここにいる患者さんたちに、私ができることがあるとすれば、何だろう。これまでの建築設計の経験と、ハンディを負うものとしての体験を、社会のために活かすことはできないだろうか。

そんな思いから、2022年、障害のある方やご高齢の方の豊かなくらしのための空間づくりを、個人事業として始めました。屋号は「inclusive design 彩榮(インクルーシブデザイン イロハ)といいます。

建築設計を行う上で、「障がい者への配慮」と聞いてまず浮かぶのは、段差をなくしたり、スロープや手すりを設置したりといった、物理的な配慮ではないかと思います。一方で、精神障害、知的障害を抱える方も多くいらっしゃいます。これらの方に向けた空間づくりには、感覚的な配慮が欠かせません。しかし、この感覚に配慮された環境の重要性について、社会の理解は、まだまだ十分とは言えません。

こうした課題を感じていた頃、ヨーロッパ発祥の「スヌーズレン」と出会いました。また、書籍という形で初めて日本にスヌーズレンを紹介した、河本佳子先生(岡山県出身/スウェーデン在住)とのご縁も重なり、多感覚環境(スヌーズレン)の魅力に、強く惹かれていったのです。


※本記事は、2026年4月14日付 山陽新聞に掲載された、大西執筆コラムをもとに、ホームページ向けに加筆・再編集したものです。

※河本先生には、現在、かんかくもーるの顧問として、当法人の活動にお力添えいただいています。