かんかくもーるのつぶやき

山陽新聞コラム③ スヌーズレンと多感覚環境

山陽新聞コラム③ スヌーズレンと多感覚環境

2026年06月30日 19:24

皆さんは「スヌーズレン」をご存じでしょうか?

1970年代のオランダで、重い障害のある方たちの余暇やリラクゼーションを目的として始まった、五感にやさしくはたらきかける空間と、その中での本人主体の関わり合いの理念を表す言葉です。オランダ語の「スヌッフレン(あたりを探索する)」と「ドゥーズレン(うとうとしてくつろぐ)」という、二つの言葉からつくられました。多感覚環境の中で自由に過ごしたり、くつろいだりする様子が、その名前にも込められています。

スヌーズレンのお部屋には、光や音、香りや触り心地など、感覚に作用するさまざまな要素が用いられます。日本には、1990年代に伝わり、重度障害者施設などを中心に導入されてきました。近年では、発達障害や認知症、抑うつ傾向のある方にもよい変化が生まれることが知られ、学校や病院、高齢者施設や地域の交流施設などにも活用が広がってきています。

ここ数年で、スヌーズレンの認知は一気に広がった印象があります。しかし一方では、スヌーズレン室をつくることや、支援する側の満足が目的となってしまい、本来大切にされてきた「本人主体の関わり」が置き去りになっている場面も少なくないと感じています。「何かしてあげたい」という支援者の思いがある一方で、結果を求められる支援の現場では、「何かをしてあげる」「何かをさせる」ことが中心の関わりとなりやすく、本人主体の関わりを難しくさせてしまうことも。

また、資格制度の整備も進められていますが、支援者の技術習得に加えて、支援を受ける人の感覚や体験の質まで踏み込めているかというと、まだまだ課題が残ります。また、学ぶ人(支援者)自身が自分の感覚に触れたり、自分の中で起こる変化を見つめる機会も少ないと感じています。

スヌーズレンの活動に用いられる多感覚環境の中では、その人自身やともに過ごす人との間に、さまざまな良い変化やつながりが生まれます。しかし、こうした感覚への配慮が丁寧に整えられた現場というのは、実はあまり多くはありません。

私が、多感覚環境(スヌーズレン)の体験機会の提供を始めてから、5度目の春を迎えました。支援を受ける人の前に、支援する人がまず、良い環境に触れることのできる機会を充実させながら、感覚に配慮した空間と、本人主体の関わりの中で起こりうることを、丁寧に整理していくことの必要性を感じています。また、その感覚と体験を言語化し、社会に伝えていくことのが、多感覚環境と、このような場を必要としている方への理解・関心につながるものと信じています。


※本記事は、2026年4月21日付 山陽新聞に掲載された、大西執筆コラムをもとに、ホームページ向けに加筆・再編集したものです。