
山陽新聞コラム⑤ 未来へつなぐための選択
2026年07月01日 17:10
多感覚環境(スヌーズレン)体験機会の提供施設「かんかくもーる」は、障がい児(者)とその家族の遊び場として、また多様な人が安心して過ごせる場所として、そっと扉を開いてきました。しかし、この場所の完成がゴールではありません。かんかくもーるのような場所が全国各地に広がり、感覚に配慮された環境が社会の中に当然に整っていくこと。それこそが、私たちがこの活動を通して目指しているものです。
そしてこの春(2026年4月)、そんな未来に向けて、活動拠点を岡山市南区藤田から、岡山市北区青江に移しました。
藤田の運営を通じてたどり着いたのは、この取り組みを私たちだけで続けていくことには限界があるということ。組織単体で届けられる範囲には限りがある。教育・福祉・医療をはじめとした各機関、企業や行政との連携が必要不可欠であることを痛感しました。
また、活動を続けていくために必要な資金面の課題も大きくなっていました。藤田の拠点は規模も大きかったため、場を維持するための固定費が大きな負担でした。そのため、多組織との連携が叶うまでの間も場を保つことができるよう、規模や立地を見直し、無理のない形で続けられる体制を整えました。
新たな拠点では、主に多感覚環境(スヌーズレン)の社会実装や、活用の広がりに向けた体験型研修・実習施設として機能していきます。支援に携わる方や、教育・医療・福祉について学ぶ人たちの体験がそれぞれの現場へと還元される。そんな機会を届けたいと考えています。この空間の中で感じることや起こる変化を、体験する人とともに言葉にしていくこと。その必要性を強く感じています。
また、障害や特性により、余暇や楽しみの選択肢が限られた方に向けた、場の提供も必要です。土日祝日には、藤田の拠点と同様に、家族や友人同士で利用できる体制を整えます。
社会課題解決型の事業は、しばしば社会性と事業性の両立が大きなハードルとなります。事業の収益化はもちろん、活動そのものや、事業の必要性についての理解が広まっていくことにも時間がかかります。前例のない取り組みであれば、なおさらです。
多感覚環境(スヌーズレン)体験機会を届けること。それは、必要な方へ手立てを増やすことだけでなく、多様な感覚への理解を社会に広げていくことでもあります。
ここから始まる取り組みが、多様な感覚を持つ人への理解を広げ、その感覚に配慮された社会の実現につながっていくことを、心から願っています。
※本記事は、2026年5月12日付 山陽新聞に掲載された、大西執筆コラムをもとに、ホームページ向けに加筆・再編集したものです。