かんかくもーるのつぶやき

山陽新聞コラム⑥ 真のバリアフリーとは

山陽新聞コラム⑥ 真のバリアフリーとは

2026年07月02日 07:37

本当の「バリアフリー」とは、どんなものでしょうか。皆さんは、バリアフリー、ユニバーサルデザインについて考えたことがありますか?

岡山市には、「設計支援委員」という制度があります。「岡山市くらしやすい福祉のまちづくり条例」によって定められた制度で、公共施設や大型の建物など、不特定多数の人が利用する場所を、誰もが使いやすいものにするために、障がい者などから選ばれた委員の意見を聴く仕組みです。10名ほどの委員が集まり、月に一度、定例会が開催されています。2022年より、私も委員の一人として任命いただき、活動も5年目を迎えました。

車椅子ユーザーをはじめ、視覚や聴覚に障害のある方、支援者や保護者など、さまざまな立場の方が委員として活躍されており、会では毎回活発な議論が交わされます。印象的なのは、それぞれの委員が「自分は利用できるか」という当事者の視点でお話をされること。また、自分とは異なるハンディを持つ人にも思いやりのある発言をされること。当事者の多くは、「できることは自分でしたい」という思いを持ちながら、自分以外の人も使いやすい環境の整備を望んでいます。

また、限られた予算や構造的な制限、景観との調和などの諸条件と、想定される利用者像を考慮しながら、「本当に必要なもの」と「そうでないもの」を丁寧に話し合います。こうした場に身を置かせていただく中で、私自身のバリアフリーに対する考えも、少しずつ形づくられてきました。

建築設計の世界では、建築基準法やバリアフリー法、関係法令や条例などに基づいて、障壁のない環境の整備が検討されます。段差の解消や通路幅の確保、スロープの勾配など、さまざまな基準が設けられており、設計者はその基準を満たせばよいことになります。

しかし、それらの多くは「最低基準」であり、実際の動線やそれぞれの身体機能に応じた使い勝手まで十分に考慮された場所というのは、決して多くありません。建物内の床がフラットであっても、駐車場からの動線に段差があれば、車椅子の方などは利用が難しくなります。施設内にバリアフリートイレがあっても、必要な機能がなければ、その場所の利用自体を諦めざるを得ないこともあります。

バリアフリー設計やユニバーサルデザインには、すべての動線にバリアがないか、また、より多くの人が負担のない形で利用できるかという視点が不可欠です。

― ハンディを持つ人の自立した生活を空間で支えること ― それこそが、バリアフリーの本質であると考えています。


※本記事は、2026年5月19付 山陽新聞に掲載された、大西執筆コラムをもとに、ホームページ向けに加筆・再編集したものです。